対人関係療法研究会(IPT-JAPAN)の皆様へ
日頃より対人関係療法研究の活動にご理解とご協力をいただき誠にありがとうございます。臨床現場でご尽力されている皆様にお役に立つ情報をお届けするために、IPT-JAPAN通信を定期的に発行しています。
このたび、日本においてもようやく isIPTが正式に認める「認定IPT(対人関係療法)治療者」養成のためのトレーニングコースを開始する運びとなりました。以下に、これまでの経緯、並びにトレーニングコースの概要等をお知らせします。
IPT-JAPAN教育研修委員会
○●世話人会から4名の認定SVer・1名の認定トレーナーが誕生しました●○
すでに国際対人関係療法学会(以下、isIPT)より「認定IPTトレーナー」「認定IPTスーパーバイザー」(以下、認定SVer)資格を認定されているIPT-JAPAN代表世話人の水島広子に続き、同世話人の安達 圭一郎、近藤 真前、宗 未来、利重 裕子の「認定SVer」資格がisIPTより認定されました。さらに、利重 裕子は「認定IPTトレーナー」資格も認定されました。このたびの認定は、これらの世話人が、isIPTが定める国際的な認定基準を満たしており、申請手続きまで滞りなく完了していることを示しています。
※認定SVerは、後述の「認定IPT治療者」になるためのスーパービジョン(以下、SV)を、認定IPTトレーナーは認定SVerになるためのトレーニングをそれぞれ行うための資格です。
○●認定SVer ・トレーナーを紹介します(あいうえお順)●○
◆ 安達圭一郎:認定SVer
① 経歴
1986年 兵庫教育大学大学院学校教育研究科修士課程修了
2008年 大分大学大学院医学系研究科博士課程修了(博士(医学))
病院臨床、別府大学、九州ルーテル学院大学、神戸松蔭女子学院大学を経て
現在、山口大学大学院医学系研究科保健学専攻 教授
② 資格
臨床心理士、公認心理師
③ 自己紹介
2009年に対人関係療法勉強会(現、IPT-JAPAN)の門をたたき、16年目を迎えようとしています。対人関係療法の学びを始めてからは、専ら精神科クリニック、大学附設の心理相談室で臨床を継続しながら、本職の教育研究活動を進めてまいりました。対人関係療法は科学的根拠が豊富なとても優れた精神(心理)療法です。しかしその前提として、患者(クライエント)自身が安心して治療に取り組めるようになることをとても重視しています。治療者である私たちには、対人関係療法の考え方や治療戦略について深く学ぶ一方で、学んだ内容を個々の患者(クライエント)の実情に合わせて応用し、迷いながらも温かく寄り添っていく覚悟のようなものが求められていると感じます。これからも一緒に学んでいきましょう。
◆ 近藤真前:認定SVer
① 経歴
2015年 名古屋市立大学大学院医学研究科博士課程修了(博士(医学))
名古屋市立大学大学院医学研究科 精神・認知・行動医学分野 助教
2017年 名古屋市立大学病院いたみセンター 副センター長
2023年 国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター 認知行動療法診療部 臨床コーディネート室長
2024年より、日本うつ病センター 六番町メンタルクリニック勤務
② 資格
医師、精神保健指定医、精神科専門医・指導医、公認心理師
③ 自己紹介
2010年から名古屋市立大学精神医学教室に入職し、認知行動療法を学び始めましたが、認知療法学会で水島先生のIPTワークショップに参加してIPTの素晴らしさに感銘を受け、2011年から対人関係療法勉強会(現、IPT-JAPAN)に参加し、IPTの勉強も始めました。臨床では主にうつ病の方にIPTを実施し、名古屋市立大学の同僚・後輩と一緒にIPTを学んでいたところ、大変ありがたいことに水島先生からスーパービジョンを受けられる貴重な機会をいただき、その学びを同僚・後輩に伝えるためにスーパービジョンに注力してまいりました。IPTのスーパービジョンでは、IPTの技術を伝えるだけでなくIPT治療者の持つ温かさをスーパーバイジーに体験していただくことが重要だと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
◆ 宗未来:認定SVer
① 経歴
1998年 旭川医科大学医学部医学科卒業
2010年 埼玉医科大学医学部医学研究科医科学博士課程修了(博士(医学))
2012年 英国IAPT高強度認知行動療法家育成過程(Postgraduate Diploma)修了
現在、東京歯科大学准教授・同大学市川総合病院精神科部長
② 資格
医師、精神保健指定医、精神科専門医・指導医、公認心理師
③ 自己紹介
ピッツバーグ大学医学部によりIPT(Brief IPT)およびIPSRTのスーパービジョンを仰ぐ。日本うつ病学会診療ガイドライン双極症2023心理社会セクション執筆責任者。英国行動家族療法NHS公認SVer&トレーナー。
◆ 利重裕子:認定SVer &トレーナー
① 経歴
2021年 名古屋市立大学大学院医学研究科博士課程修了(博士(医学))
2021年10月より、名古屋市立大学大学院医学研究科 精神・認知・行動医学分野 助教
② 資格
医師、精神保健指定医、精神科専門医・指導医、公認心理師
③ 自己紹介
2014年より精神科医としての道を歩み始め、同年より対人関係療法勉強会(現、IPT-JAPAN)に参加するようになりました。これまで、臨床および臨床研究にて、うつ病や摂食障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などを患った患者さんに対して、IPTを実施してまいりました。ここ数年は、ご遺族のうつ病・遷延性悲嘆症・PTSD、周産期うつ病に対してIPTを積極的に実施しております。将来的に日本国内においても、IPTのエビデンスが示されている疾患を患った患者さんがIPTを選択肢の一つとして選べるように、IPT研究ならびにIPT治療者育成に尽力していきたいと思っております。IPT治療者育成の要となるスーパーバイズにおいては、スーパーバイジーの方がIPTを実臨床に活かすことにやりがいや楽しさを感じていただけるように、自己研鑽を積み重ねることはもとより、スーパーバイザーとスーパーバイジーとの関係を重視しながら、IPTの治療戦略を実際の症例にどのように適応するかを掴んでいただけるように努めてまいります。
どうぞよろしくお願いいたします。
○●「認定IPT治療者」トレーニングコースの参加条件●○
代表世話人の水島広子は、日本におけるIPTの第一人者として長い間当会をけん引してまいりました。その功績が認められ、isIPTより、各国へのIPT導入や普及に最も功績のある代表者に与えられるgrandfatherに認定されております。加えて、世話人4名が認定Sverの資格を有したことで、日本においてもisIPTの基準に則った「『認定IPT治療者』のためのトレーニングコース」(以下、トレーニングコース)を正式にスタートできる環境が整ってきました。ただし、現時点では認定SVerの人数が限られるため、当面の間、次の2つの条件を満たした方に、順次事務局より、トレーニングコースへのご案内を始めることといたします。
条件:
① 実践入門編を修了後、実践応用編において2016年度以降に5回以上の症例発表を経験していること
② 2022年度から2024年度の3年間に、実践応用編に「参加者」として1回以上の参加歴があること(「参加者」とは、症例発表者でなくても、参加者としてディスカッションに参加できる権利を有する者を指します。「見学者」はこれに含まれません。)
この2つの条件を満たしている方には、当IPT-JAPAN事務局より現在ご登録いただいているメールアドレスに、2025年4月30日までにご連絡を差し上げます。条件に当てはまるにもかかわらずメールが届かないという方は、お手数をおかけ致しますが、分かる範囲で症例の発表日と、直近3年間で最も新しい実践応用編の参加歴を添えて事務局までお問い合わせください。なお、トレーニングコース参加者には、できるだけ早くトレーニングが開始できるよう進めてまいりますが、SVer割り振りのための準備調整期間として数か月以上を頂戴することもございます。予めご承知おきください。
○●トレーニングコースの内容と認定IPT治療者への申請方法●○
Ⅰ トレーニングコースの実際
① 認定SVerによる事前の適否判断
トレーニングコース開始にあたり、事前に認定SVerより、トレーニングに適切な症例か否かについて判断させていただきます(例えば、切迫した希死念慮がないこと等)。紙ベースによる症例概要の精査、SV開始前の面接等でおこないます。
② トレーニングの内容
・トレーニングコース参加者は、認定SVerの指導を受けながら、初期・中期・終結期のセッションをすべて含む最低3症例の終了が必須です。なお、3症例のうち1症例はうつ病であることを推奨します。
・認定SVerの指導は、原則、毎セッションごとにおこなわれます。事前にセッションの逐語録を作成し担当認定SVerに提出してください。実際のトレーニングセッションは、逐語録を中心に進められます。
・録音・録画記録については、原則、認定SVerが必要とするタイミングで提示をしてください。各症例トレーニング開始前に認定SVerと十分に打ち合わせをおこない、そのための同意取得などの準備を進めてください。
・各症例のトレーニング終了は認定SVerによって判断され、最終的な認定IPT治療者の認定はIPT-JAPAN世話人会がおこないます。
③ その他(実施方法、契約、申請方法等)
・トレーニングの実施方法については、対面、オンライン、いずれの方法も可とします。
・トレーニング開始前に認定SVerと、キャンセルの取り扱い、連絡方法、SV費用等の契約を完了してください。SVにかかる費用については、原則10,000円/セッションと設定します。地域差を考慮しますので、具体的には認定SVerにご相談ください。
・症例が完了したかどうかについては認定SVerが判断し、完了したと評価された症例のみを、申請に含めることができます。
・申請に際しては認定SVerからの推薦状が必要です。
・申請をおこなうためにIPT-JAPANの正会員であることが求められています。
補遺) グループSVについて
・原則、個別のSVに順じます。ただし、各参加者が、必ず初期、中期、終結期を含む症例を提出し指導を受けてください。症例提出者以外のトレーニング参加者については、1症例のトレーニングを完了したものとはみなされません。ご注意ください。
・グループSVの回数にもよりますが【Wilfley(2000)では90分/回、20回】、参加者が全ての治療セッションを報告できるわけではありません。必ず初期、中期、終結期を含めてください。この件については認定SVerと十分話し合いをしてください。
・グループには、トレーニングコース参加者以外の初心者を加えることができます。トレーニングコース参加者以外の参加者には、当日配布される資料代(逐語録)として各自1、000円/回を徴収します。
Ⅱ 実践応用編の位置づけにつきまして
実践応用編は、実践入門編の修了者を対象に症例の逐語録をもとに、グループディスカッション形式で行うものとなっています。認定SVerによるトレーニングコースが開始されても、実践応用編はこれまで通り継続されますので、どうかご安心ください。
実践応用編では、症例概要や逐語録に加えて、IPT固有の「親しさサークル」、「症例概要図」を用いた発表を行うことで、段階的にIPTの実践に慣れていただく場となっています。特に、IPTで難しいとされる「ケースフォーミュレーション」、「コミュニケ―ション分析」について、学びを深めていただくことを目的としています。また、IPTをまだ実践できる環境にない方も、「見学者」として具体的なIPTのやり取りを学ぶことができます。
将来的に認定IPT治療者を目指される方は、実践応用編にご参加いただき、IPTの基本を習得されることをお勧めいたします。同時に、今回新たに開始するトレーニングコースでは、SVの少なくとも1回は実践応用編での発表を義務付けております。引き続きのご参加を推奨します。
Ⅲ おわりに
最後に世話人会より、認定IPT治療者を目指される皆様に2点お願いをさせていただきます。
① isIPTでは、現在各種ワーキンググループ(例:青年期、周産期、摂食障害など)が活発に運営されています。認定IPT治療者を目指される中で、是非ともいずれかのワーキンググループに所属され、国際的な動きを肌で感じていただき、ゆくゆくは国際的に活躍できる人材に進んでいただければと思います。
② 認定IPT治療者を目指されると同時に、認定SVerの取得も視野にさらなる研鑽を積んでいただけますと大変嬉しく思います。
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IPT-JAPAN通信 編集委員会 担当メールアドレス: letter@ipt-japan.org
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