対人関係療法研究会(IPT-JAPAN)の皆様へ
日頃より対人関係療法研究の活動にご理解とご協力をいただき誠にありがとうございます。臨床現場でご尽力されている皆様にお役に立つ情報をお届けするために、IPT-JAPAN通信を定期的に発行しています。先日、実践応用編が1年ぶりに開催されましたので、参加者の方々の感想を「増刊号」としてお届けします。次回、ご参加いただく際の参考になれば幸いです。

IPT-JAPAN教育研修委員会

○●実践応用編(10/24(日)オンライン開催)○●

当日は、摂食障害や双極Ⅱ障害、非定型うつ病や不安症など幅広い症例をご発表いただきました。偶然ではありましたが、思春期・青年期の方が多かったことで、日頃同じような症例をお持ちの方には特にたくさんの気づきを得ていただいたようです。以下に、参加者の方々からいただいた感想を抜粋して掲載致します。

  • 思春期特有の変化を加味した疾病特有の「役割の変化」へのフォーミュレーションが大変参考になりました。
  • 具体的な台詞レベルでの対応や症例の経過、他の先生方との質疑応答を含め、初学者として押さえるべき重要なポイントを学ばせていただくことができたように思います。
  • 気持ちの表出が難しい患者さんに対してのアプローチやフォーミュレーションの伝え方や診断が重複した時の焦点づけの難しさが参考になりました。また、治療者が与える安全な空間は本当に患者さんの力になるのだと、改めて思いました。自然な流れのなかでIPTの大切なところが活かされており、本当に感動いたしました。
  • 病気を治したくない、という患者さんとの向き合い方が参考になりました。治療者が考える病気を治すということと、患者さんが考える病気を治すということの確認(すりあわせ)をしてみることや、気持ちを決めつけられると思う患者さんへの言葉の選び方について具体的に理解することができました。

また、急遽発表が行えなくなった発表者の先生に代わり、IPT-JAPAN世話人の前川 浩子が初めてIPTの症例発表を行いました。長年の見学による体験よりも、やはり自ら参加して発表することでの学びに勝るものはなかったようです。さまざまな理由で実践応用編への症例エントリーを迷われる方にとって少しでも勇気を持ってもらえればと、前川よりIPTデビューの体験談をお届け致します。ぜひお読みいただき、次回以降のエントリーをご検討いただければ幸いです。

○●「見学者席」での学びからIPTデビューへ○● 世話人 前川 浩子

10月24日(日)に開催された実践応用編は、私のIPT症例発表のデビューとなりました。研究会はいつもと変わらずあたたかい場所で、水島先生をはじめ、みなさまのおかげで発表を終えられたことをありがたく思っています。

私が入門編に参加したのは2007年3月です。それまでの私は摂食障害の危険因子に関心があり、「予防」の観点から研究に取り組んでいました。博士論文に研究をまとめ、少し燃え尽きた状態になっていたところに対人関係療法と出会い、摂食障害の「治療」について学ぶことが新しい目標になったのです。入門編での学びは驚くことばかりで、特に患者さんが回復されていくプロセスが素晴らしく、感動を覚えたことが今でも思い出されます。そして、もう一つ忘れられないことは、「前川さんはこうして、人がめきめきと良くなっていくのが好きでしょう?きっと前川さんは対人関係療法が好きだと思うわ。」と水島先生におっしゃっていただいたことです。この言葉は今でも私のお守りになっています。

しかし、IPTを実践するには、臨床の場が必要です。私の臨床の場は学生相談室で、IPTのように構造化された期間限定の治療を行うことは難しい状況でした。それでも、IPTを学びたいと思い、見学者として参加し続けました。応用編で発表される先生方の逐語録を読み、IPTらしい「やりとり」を抽出し、水島先生や他の先生方からの質問やコメントの記録も行いました。他にも、自分だったらどの問題領域を選び、どのようにフォーミュレーションするだろうかということも常に考えていました。このような見学者としての学びを14年続け、見学者として聴かせていただいた症例数は約170(ノート6冊分)になっています。ようやく今年の夏からIPTの症例を持つこととなり、今回、発表の機会をいただきました。

研究会で学んだことは臨床の場面で少しずつ実践しました。例えば、クライエントさんの発言についてわかったふりをせず、質問してみること(その際に「どうして?」を使わない)、クライエントさんの感情を確認し、感情を丁寧に扱っていくこと、決めつけた評価を下さないこと、あたたかく、支持的な姿勢でいることなどです。また、もしこのケースにIPTを適用するとしたらどのようなフォーミュレーションになるのかを考えてみることもあり、少しずつIPTの練習をしていたように思います。

「学ぶ」という言葉は「真似る」、「まねぶ」が語源と言われます。私のIPTデビューに至るまでの学びは、これまで症例発表をされた先生方、質問やコメントをされた先生方、そして、水島先生がお話しされていた言葉をまさに「真似る」ことでした。私のIPT実践の支えになっている、約170症例の患者/クライエントさん、治療者の先生方に感謝申し上げます。そして、これからも真摯なIPT治療者であることを目指して努力いたしたいと思います。

○●次回実践応用編開催案内 2022/2/20(日)オンライン形式○●

次回、実践応用編は年明けの2月20()9:30-16:30の日程で、オンライン形式にて開催致します。なお、発表者につきましては今回10月の実践応用編にエントリーいただいた方にご担当いただくことになっており新規のエントリーはございません。参加者、見学者枠の条件など詳細につきましては、また別途ご連絡致します。次回も皆様と一緒に学びを深めていきたいと思っております。
本年も大変お世話になりました。皆様どうぞ良いお年をお迎えください。

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